母の思い出の味。
母の思い出の味。
お堂にお供えの古い花の片付けに蓮華堂へ参りました。ご本尊地蔵尊の前の棚にお供えが沢山あります。
少し奥へ目を向けますと、綺麗な入れ物に入りました、弁当がお供えになっています。
いかにも赤ちゃんへ向けられた大きさの、三色おにぎりが綺麗に詰め合わされお供えになっています。
お亡くなりの赤ちゃんへお供えなさるためにお母さんが想いを込めてお作りになられたであろうことが、直接に伝わって参ります。
お亡くなりの赤ちゃんは直接にはお召し上がりにはなられませんが、お母さんの深い想いとその味は間違いなく、水子さんの口へ届いています。
さて、蓮華堂、絆縁堂へお参りの皆さんにとって、お母さんの味の食べ物は何ですか?
おそらく、向かい合わせでこのお話しを致しましたら、際限なく、私のお母さんの味は「これ」というお話が出て来るかと思います。
私は、父、母とお別れ致し、少し日々が経っています。
自分が寝起き致しています部屋に父、母のお骨を少し入れた骨壺を祀り、にこやかに微笑んでいる両親の写真をその前に置いています。
夜、布団の中に入る前には、その写真に向かって「お休みなさい」と申して就寝致し、朝起きましたら「おはよう」、「今日も一日お守りくださいね。」と申してから朝が始まります。
そして、朝一番に入れました「緑茶」を供え、残りのお茶を両親と共に頂いています。
大事な故人は何時も、自分のすぐそばにいて下さいます。
先に述べました蓮華堂へお供えの三色弁当を見て思い出すことがありました。
母が作ってくれた「ワンタン」の味を思い起こしました。
未だ小学生のころの楽しみは、時折両親、妹と共に町へ連れて行ってもらい、外の食堂で食べさせてもらう、「外ご飯です」。
様々、外ご飯を頂いた記憶がありますが、特に頭に残っているのが、町の中華料理屋さんで食べました「ワンタン」です。
ラーメン程にメジャーではありませんが、ひき肉を餃子のような皮で三角に包み、中華そばのようなスープで頂きます。
その都度に妹と私が喜んで食べる様子を見ていたからでしょうか、普段の夕ご飯の時にも、とても手が掛かる料理ながら、母が作って食べさせて下さいました。
他にも母の思い出の料理は沢山ありますが、「ワンタン」は私にとって母親の思い出のベスト3に入る食事です。
関西はラーメンのお店は沢山ありますが、「ワンタン」を頂戴出来る店にはお目に掛かっていません。
自分で材料を用意致し、最近は家で作り食べる機会が多いです。
ツルツルした触感のワンタンを頂き、ビールを流し込みますと、気持ちが「母と食べたワンタン」の時にタイムスリップ致します。
嬉しい思い出を思い起こさせて下さいました、蓮華堂のお供えに感謝です。
皆さんのご両親はご健在のお方が多いかとは思いますが、お母さんの料理を召し上がるときには、これは「お母さん」の味との想いを感じながら召し上がられましたら、普段の晩ご飯も、又、違うご飯に感じるかもしれません。
合掌